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「飲食店が使う米は足りていない」 日本お米協会代表理事に聞く日本の米の現状

日本人なら誰しもが口にする、私たちの食卓には欠かせない、お米。当たり前にありすぎて、意外と詳しく知られていない食材の一つといえます。現代の米農家を取り巻く状況や、料理と米の関係などについて、農家で「一般社団法人 日本お米協会」の代表理事を務める、森賢太さん(30)に聞きました。

 

日本の米文化を守りたい

編集部:「日本お米協会」、とっても素敵な名称ですね! 協会の目的は何なのでしょうか?

 

森賢太さん(以下、森さん):日本の米文化を守ることが一番大きな目的です。というのも、日本からどんどん田んぼが減っています。食も多様になり、日本のお米の消費量は50年前の約半分になっているんです。

 

編集部:そんなに減ってきているんですね…。

 

森さん:お米を消費者に食べてもらうのも大切ですが、農家は消費者に「選ばれるお米」を作ることが重要だと思うんです。こうした考えから、農家さんたちが「集合知」でお米のことを考えるための、「農家参加型コミュニティー」として、日本お米協会を運営しています。

 

編集部:発足したのはいつですか?

 

森さん:2012年から任意団体として活動スタート。その後、 2015年に一般社団法人として法人化しました。

 

編集部:参加されている農家の方は何人ですか?

 

森さん:全国のお米農家、約500人です。若い世代の方を中心に登録されています。

 

編集部:かなりの人数ですね! 具体的にはどういった活動をされているんでしょうか?

 

森さん:このWebメディアを中心としたシステムの目的は、栽培のテクニックや新しい農機具の情報共有をすること。我々が農家さんを取材して記事を執筆し、Webメディアに投稿しています。また、月に1回は、勉強会を開いています。熊本だけではなく、各地で自主的にも開催されています。

 

編集部:森さんは30歳という若さで、農業に携わっていらっしゃいます。どういう経緯があったのでしょうか?

 

森さん:出身は石川県で、実家は兼業農家です。私も幼い頃から農作業の手伝いをしていました。ただい、友達に手伝っている姿を見られるのすら、嫌だったんです。

 

編集部:なぜ嫌だったのでしょうか?

 

森さん:「なんでうちはお米を作ってるの?」って祖父に聞いたときに、「お米作りは別に仕事じゃない。先祖から受け継いできたものだから作ってる」って答えられて。なんだそれって思いましたね。当時は特に農業に興味があったわけではありませんでした。

 

編集部:そこからどのようにして農業に興味を?

 

森さん:高校を卒業後、熊本で竹林整備によって伐採される竹を使って幻想的な空間を作る「竹あかり」を手伝っていました。「竹あかり」では、竹の中にキャンドルや火を灯した後、竹炭や竹堆肥として、土に還します。その際に、田んぼに還元したり、カボチャを作ったりしていて。

 

編集部:その時改めて農業に触れたんですね。

 

森さん:その通りです。阿蘇の米農家さんと関わったのですが、お米作りは面白いと素直に感じました。そして、阿蘇の雄大な風景は、一次産業が作っているということを、実感したんです。そういうこともあって、米農家でも自分でやっていきたい、やっていこうと思い始めて、2009年に「竹あかり」の手伝いを辞めて、熊本の生鮮食品関係の会社に少し勤めたあと、米農家として独立。以降、自然栽培のお米を作り続けています。

 

編集部:田んぼはどこにあるんですか?

 

森さん:上益城郡にある御船(みふね)で作っています。

 

熊本地震では多くの農家が農業を一時断念

編集部:昨年の熊本地震で、被害などは?

 

森さん:江戸時代末期に造られ、現代でも利用されていた農業用水路が、地震で被災しました。それにより、昨年は御船の多くの農家さんが米作りを一時的に断念したんです。実は僕もそのうちの1人で。今年は、ようやく復旧工事が始まり、一部の地域で作付けが再開されたので、僕もやっとお米を収穫できましたね。

 

編集部:地震後、米作りができない間は、どうしていたんですか?

 

森さん:県内150以上の農家に、作付け状況の聞き取り調査を行いました。地震による農業被害は、深刻でしたね。胸が痛かったです。

 

地震の影響で作付できなかった田んぼや稲の種を活用し、どうにかして次に繋げたい。そう思い、「熊本ヒノデ米プロジェクト」を発足させました。

 

編集部:どういったプロジェクトなのでしょうか?

 

森さん:復興のためにも、まずは、熊本の農業を元気にしたいとの思いがあったんです。熊本で被災した米作り農家をサポートするために、一時的に田んぼを預かり、ボランティアや被災者、避難所の子どもたちなどの協力のもと、田植えから収穫、そして「熊本ヒノデ米」として販売までを支援する、といったプロジェクトを行いました。

 

編集部:一大プロジェクトですね! どのくらいの方々が手伝ってくださったのでしょうか?

 

森さん:約500人が協力してくれました。熊本市内を中心に、55ヘクタールほど作付けしましたね。

 

編集部:作ったお米はその後、どうしたんですか?

 

森さん: Web経由で注文を受け付け、個別発送しました。

 

編集部:森さん自身のお米はどのように販売しているんですか?

 

森さん:Web上で販売しています。それ以外にも、2014年から「TABI to DESIGN」(熊本市東区)というオープンスペースで、店頭販売も行っています。

 

編集部:森さんは、熊本の農業と、生産者に対する熱い思いをお持ちなんですね!

 

森さん:ほかに、2009年から「アースデイマーケットくまもと」という月1のオーガニックマルシェを開催しています。生産者と消費者の出会いの場をつくれたらと思ったことがきっかけです。生産者自身が自分の野菜や食品などを直接売る、「顔の見える産直市」として、開催しています。

 

編集部:「生産者と消費者の出会いの場をつくる」という考えに至った背景は何でしょうか?

 

森さん:北海道の会社による食品偽装事件を覚えていますか? 高校卒業後、国内を自転車でまわっていた時期があるのですが、僕が北海道を訪れた際にちょうど事件が起きて。

 

編集部:もちろん覚えています。

 

森さん:法で指定した添加物の基準値を上回る量を使用し販売していたり、商品開発と称し、パンの切れ端などを配合し、人為的に良質な商品に見せかけたりと、さまざまな食品偽装を起こしていた。あの時、社長が悲壮な顔をしているのが印象的で。でも、社長や会社が悪いというよりも、作っている人と食べる側が互いをよく知らずにいるその関係性自体が問題なんじゃないかと考えました。

 

編集部:本当に森さん自身の思いから生まれたアースデイマーケットなんですね。

 

森さん:アースデイマーケットが熊本に根付いて、いろんな人に認知してもらえていることは、素直にうれしいですね。いつも子どもからお年寄りまで幅広い年齢層にお越しいただいています。

 

「飲食店が使う米は足りていない」

編集部:森さんは、どのように生産者さんと繋がり、農業についての知識を習得されたのでしょうか。

 

森さん:生産者の会議などに顔を出して、生産者さんと繋がりを作って、そこから農業に関する知識も習得していました。

 

編集部:森さん自身、一生産者です。お米農家はどういった状況下に置かれているのでしょうか?

 

森さん:利益が出にくい構造、高齢化問題、後継者不足など、さまざまです。トマトやイチゴなどの売値が高い野菜や果物に比べると、お米の利益は低い。そういう意味では、米作りの新規就農者をいかに獲得するかが、日本のこれからの課題ですね。

 

編集部:私も実は今年、御船で小さな田んぼを借り、種からお米を育て、収穫しました。大自然の中で土に触れ、自分の植えた稲が育っていく体験は、とても新鮮で、清らかな気持ちになりました。

 

森さん:そうなんですよ。だからこそ、もっと若い世代の人たちにも、農業、そして、米作りのおもしろさを味わってもらいたいです。

 

編集部:ほかに、米作りにおける問題は?

 

森さん:実は、飲食店が使用するお米が足りていないんです。

 

編集部:飲食店向けのお米とは?

 

森さん:実は、料理によって適したお米が異なります。例えば、寿司に合うお米、カレーに合うお米とか。戦時中など、食料を増やさなければいけない時代を経て、現在は米が満たされた時代に突入したといえます。しかしながら、料理に合うお米が足りていないのが現状です。

 

編集部:料理に合うお米って、どうやって判別できるんですか?

 

森さん:お米屋さんに聞くのが一番いいですね。どの品種のお米が、どの料理に合うのか、詳しく教えてくれますよ。

 

編集部:知らなかった! 私も今度お米屋さんに足を運んで尋ねてみます。これから挑戦したいことなどはありますか?

 

森さん:米農家が、子どもの憧れるような職業として認識されたらうれしいです。夢のある産業として、子供たちに語ることができたら。

 

編集部:そのために取り組んでいることはありますか?

 

森さん:これから熊本の若手農家を中心とした「熊本ごはん組」というプロジェクトを発足させます。バケツで育てられる「バケツ稲セット」を広めるなどし、新しい米作りを提案していけたらと考えています。また、稲作文化を次世代に伝えていくためにも、日本お米協会の代表理事として、これからもさまざまな活動に取り組んでいきたいですね。

 

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一般社団法人 日本お米協会

http://rice-assoc.jp/

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